「え?俺のスマホ、この街にある!てか、近づいてきてる!!!!」

 気軽な気持ちでひらいた追跡画面のGPSアイコンは、今、まさに駅を降り、うちへのルートを進みはじめているところだった。

「あ、兄貴が?い、いや、そんなコトするワケがない。じゃ、じゃあ誰だ?」

 いつもは冷静沈着な俺様も、この時ばかりは不安になった。
 だってさ、みるみる間にウチに、この部屋に近づいてくるのだ。
 警察……は、落し物を届けてなんてくれないだろうし……

 と、その時!

 ピーンポーーーーン

 チャイムが鳴った。

 この建物はプレハブなだけあってか、ドアに覗き穴などない。だから防犯カメラだの設置しているのだが、昨日から切れたままのようだ。俺は仕方なく、扉を開けた。ゆーっくりと慎重に……
 するとそこには

「石、返してくれる?」

 秋星電影の金髪少女が立っていた。

「え?あ、き、君はあの時の」
「あーゴタクはいいから、早く石を返して!」
「ゴタクって……」

 電影少女は、昨日の印象とは違って乱暴な口調だった。

「それに石って?」
「CPU、中央演算処理装置、人呼んで石よ。昨日アンタに預けたでしょ?」
「え?あれはくれたんじゃ?てか兄貴に渡しちゃったよ」
「じゃ、その兄貴とやらはドコ?」
「そ、それが……」

 俺は正直に朝起きたら兄貴が行方不明だと告げた。

「消えた?チッ なんてこと……まあいいわ、あんた死になさい。このことを知ったからには死になさい」

 電影少女はサラッと言い放った。

「はい?な、なに?この展開!俺、イヤだよ?嫌いだよ?鬱展開とかさ」

 という俺の声を聞きもせず電影少女はナイフを取り出した。

「え!しかもナイフ?ナイフなの?いやいやいや、なんかそんな普通なのさらに嫌だよ。魔法とか、光線銃ならともかく、あ、超能力でもいいからさ、頼むよ。そんな普通のナイフで刺すとかやめてくれよ!」

 どうにも俺も混乱していた。そんな現実離れしたことを言えば助かるとでも思ってるように。

「ウッサイ!やっぱアンタなんか知ってるわね!暗黒水(ブラスイ)も、黒球(ブラガン)も無いから魔力(マーリキ)は使えないのよ!」

 しかし、なぜだか電影少女は慌てた様子を見せた。

「死ね!無残に死にやがれ!」

 ギャッ

 ナイフを振り上げた電影少女を見ると俺は思わず目を閉じてしまった。そして俺は、ヤラれた……そう思った。普通に考えれば男と女、もしかしたら戦えば男である俺のほうが強いのかもしれない。しかし……
『闘いとは気の力でするものだ!』
 と、どこかの有名な格闘家が言ったとか言わないとか……
 まー気力で負ければ勝負にならないのは間違いない。そして……自慢じゃないが俺は気が弱い。

 すなわち……死!



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