アキバの夜は早い。6時を回ると小さな店は閉まり始め、7時にもなるとだいたいのニッチな店は閉まってしまう。すると、なんだかひときわと寂しい雰囲気になってゆくのだ。
そんな感傷に浸りかけていた俺は、最後の最後でヘンなモノを見つけスマホで写真を撮っていた。それは、秋葉原の裏、いや、アキバの場合どこが裏だか表だか分からないけど、道に迷って迷い込んだ裏の秋葉原、略してウラアキとさえ呼べる薄暗~い店の前にあったガチャガチャだ。
俺は見た。ガン見した。なぜならそこにはこう書いてあったからだ。
『暗黒のガチャ、言い値で(・∀・)イイネ!!』
………
「ダ、ダジャレか?てか言い値って誰が決めるんだ?ダジャレを言う奴は誰じゃ?なんつってなー」
「ワタシよ」
突然闇の中から声がして
「おお!魔女さま!」
思わず俺は叫んだ。もちろん心の奥底のさらに奥の方でだが。
暗黒ガチャマシーンの背後、薄汚い雑居ビルの階段の下あたりから、突然、真っ黒い衣装の少女が現れたんだ。黒髪で前髪パッツンの彼女の頭には左右にちっちゃいコウモリの羽みたいな髪留めがあったし、ご丁寧に左目は包帯で隠されていた。そして、当然、抑揚のない冷めた声だったし、俺のコトを無理やり蔑むような目で見ていた。もちろんこの街じゃあ、そういった風体に関してツッコミを入れるのはご法度だ。ツッコもうものなら一見さんはお断り!とばかりに人外の論理に基づいた崇高な説明を延々と聞かされるハメになる。したがって、その件は黙っておいた。暗黒の了解ってやつだ。
奥に目をやれば、『魔界入口』とある。
「はは~ん」
と俺は合点した。
この立地で、このネーミング……流行らねーだろ。もっと魔女っ子的な響きとか、ウィッチー的な響きを入れないと客こねーだろ。と、いらぬ心配をしていた。大きなお世話ってヤツだ。
しかし……
「アナタ……なら……5百円……でイイ」
かー聞いたか?この上から目線のちょいかすれた声で「5百円……でいい」ときたもんだ。5万円でも、5千円でもなく5百円だ。江戸っ子風にいうなら5しゃくえんだ。まー俺も江戸っ子の片隅でもなんでもないが宵越しの金はもたざる者だから、財布にちょうどある5百円玉を惜しげも無く投入した。え?帰りの電車賃は?だって?これだから田舎もんは困るぜ。東京はスイカだ!いや、ちがったパスモだ!これさえあれば、どこへでもスイスイとイコカ~ってな具合に行けるんや!ということで兄貴に渡されたスーパーカードがあるんだぜ!
さておき、俺はその日最大規模の集中力でガチャガチャを回した……
ガ、ガ、ガチャン
………何も出ない
「こ、故障じゃねーか!金返せ!」
などとは決して言えない仏様のような俺様は、心のなかで3回はさっきの暗黒少女(仮名)を叩きのめすと、その場をスゴスゴと離れようとした。すると……
「アナタ……アブナイ……」
暗黒少女(仮名)が目を赤く輝かせた。
ギクッ!
こ、コイツ、俺の心が読めるのか?や、やばい本物?妄想の中で俺がした行為は……ここで言えるレベルじゃねー!や、殺られる?逆に俺殺られちゃう?
そう思って首をすこしすぼめて、衝撃に備えていると意外な言葉がきた。
「だから、コレ……ね……ハイ」
暗黒少女(仮名)は、そいつが産み落としたのじゃないか?とさえ思えるほど真っ黒な玉を俺に渡してよこした。しかし、一瞬触れたその手は……想像に反して暖かかった。そりゃそーだ、いくら暗黒界から這い出てきたように見える暗黒少女(仮名)だって俺と同じ人間。人類皆兄弟、心が読めるハズがねー!よな?
「ワタシ……心なんて読めないケド……分かる……とりあえず……ソレ……家に帰ってから開いて……」
「え、ええと……ど、どうも……」
なんだか背筋に冷たいものを感じた俺は総武線5番ホームから電車に乗ってその日は帰ることにした。
兄貴……アキバはやっぱ怪しい街でした。
そんな感傷に浸りかけていた俺は、最後の最後でヘンなモノを見つけスマホで写真を撮っていた。それは、秋葉原の裏、いや、アキバの場合どこが裏だか表だか分からないけど、道に迷って迷い込んだ裏の秋葉原、略してウラアキとさえ呼べる薄暗~い店の前にあったガチャガチャだ。
俺は見た。ガン見した。なぜならそこにはこう書いてあったからだ。
『暗黒のガチャ、言い値で(・∀・)イイネ!!』
………
「ダ、ダジャレか?てか言い値って誰が決めるんだ?ダジャレを言う奴は誰じゃ?なんつってなー」
「ワタシよ」
突然闇の中から声がして
「おお!魔女さま!」
思わず俺は叫んだ。もちろん心の奥底のさらに奥の方でだが。
暗黒ガチャマシーンの背後、薄汚い雑居ビルの階段の下あたりから、突然、真っ黒い衣装の少女が現れたんだ。黒髪で前髪パッツンの彼女の頭には左右にちっちゃいコウモリの羽みたいな髪留めがあったし、ご丁寧に左目は包帯で隠されていた。そして、当然、抑揚のない冷めた声だったし、俺のコトを無理やり蔑むような目で見ていた。もちろんこの街じゃあ、そういった風体に関してツッコミを入れるのはご法度だ。ツッコもうものなら一見さんはお断り!とばかりに人外の論理に基づいた崇高な説明を延々と聞かされるハメになる。したがって、その件は黙っておいた。暗黒の了解ってやつだ。
奥に目をやれば、『魔界入口』とある。
「はは~ん」
と俺は合点した。
この立地で、このネーミング……流行らねーだろ。もっと魔女っ子的な響きとか、ウィッチー的な響きを入れないと客こねーだろ。と、いらぬ心配をしていた。大きなお世話ってヤツだ。
しかし……
「アナタ……なら……5百円……でイイ」
かー聞いたか?この上から目線のちょいかすれた声で「5百円……でいい」ときたもんだ。5万円でも、5千円でもなく5百円だ。江戸っ子風にいうなら5しゃくえんだ。まー俺も江戸っ子の片隅でもなんでもないが宵越しの金はもたざる者だから、財布にちょうどある5百円玉を惜しげも無く投入した。え?帰りの電車賃は?だって?これだから田舎もんは困るぜ。東京はスイカだ!いや、ちがったパスモだ!これさえあれば、どこへでもスイスイとイコカ~ってな具合に行けるんや!ということで兄貴に渡されたスーパーカードがあるんだぜ!
さておき、俺はその日最大規模の集中力でガチャガチャを回した……
ガ、ガ、ガチャン
………何も出ない
「こ、故障じゃねーか!金返せ!」
などとは決して言えない仏様のような俺様は、心のなかで3回はさっきの暗黒少女(仮名)を叩きのめすと、その場をスゴスゴと離れようとした。すると……
「アナタ……アブナイ……」
暗黒少女(仮名)が目を赤く輝かせた。
ギクッ!
こ、コイツ、俺の心が読めるのか?や、やばい本物?妄想の中で俺がした行為は……ここで言えるレベルじゃねー!や、殺られる?逆に俺殺られちゃう?
そう思って首をすこしすぼめて、衝撃に備えていると意外な言葉がきた。
「だから、コレ……ね……ハイ」
暗黒少女(仮名)は、そいつが産み落としたのじゃないか?とさえ思えるほど真っ黒な玉を俺に渡してよこした。しかし、一瞬触れたその手は……想像に反して暖かかった。そりゃそーだ、いくら暗黒界から這い出てきたように見える暗黒少女(仮名)だって俺と同じ人間。人類皆兄弟、心が読めるハズがねー!よな?
「ワタシ……心なんて読めないケド……分かる……とりあえず……ソレ……家に帰ってから開いて……」
「え、ええと……ど、どうも……」
なんだか背筋に冷たいものを感じた俺は総武線5番ホームから電車に乗ってその日は帰ることにした。
兄貴……アキバはやっぱ怪しい街でした。
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