翌朝、目を覚ますと……いや、目を覚まし損ねるとスマホが無いことに気がついた。いつもスマホのアラームで起きていたから寝過ごしたんだ。
 ヤバい。ヤバいぞ。あの中には貴重な友人のアドレス……はないけど、死んでほしいクラスメイト一覧や告白できたらしたい女の子の家までの最短ルートなどちょっと流出するといい感じに人生が終わりそうな情報が満載なのだ。
 そんなこんなでプチパニクっていると、ドアの下の隙間にメモ用紙があるのに気がついた。

『スマホは預かった。返して欲しければ店までとりに来い。
 って連絡が入ったぜ。スマホ、忘れてきたのか?ドジめ』

 あ、兄貴だ。兄貴の字だ。チキショー昨日の時点で言いやがれ!だ。

 俺は不安にかられたままその日一日をなんとか過ごすと、放課後ソッコーでアキバに向かった。


「おかえりなさませ!ご主人様~~」

 あ、ああ、そうだ。俺はまたアキバに戻ってきた。
 アキバの駅に降り立つと、俺はすぐに秋星電影に向かった。

「え?いない?」

 しかし、今度こそ店のオヤジを捕まえて、金髪看板娘のコトを尋ねると、そんな者は居ない、というのだ。

「え?昨日居た娘だよ?こうー金髪で明るい笑顔のカワイイ娘」

 しかし、そもそも女のスタッフなどいた事がないと言う。仕方がないからスマホの件を聞いてもそんな物はないということだった。腑に落ちないけど、そうも言っていられない俺は、ふと、暗黒少女(仮名)を思い出した。なんとなく彼女は何もかも見透かされているようで会いたくはなかったが、逆に彼女ならスマホの件もわかるのではないか?そう思い直し、店を探したが、店を見つけることはできなかった。
 しかし、ひとつだけわかったことがある。

「やはり……牛すじ入りのほうが美味しいんだ。おでん缶は……」

 そんなコト言ってる場合じゃない。場合じゃないが……どうしよう?

「あっ!」

 思わず大きな声を出し、アブね~なコイツ、の視線で見られてしまったが、俺は思い出した!思い出したのだ!
「そうだ、あの時、暗黒ノガチャの写真を撮ったハズだ。そう、スマホにはGPS機能がある。だから写真のジオタグを見れば場所が分かるのだー!」

 って、待てよ……そのスマホを探してるんだった。あれ?本末転倒?卵が先かニワトリが先かになってる?

「いやいや待て待て。時代はクラウドだ、そうだ。ネットに自動でバックアップされてるはずだ!」
 いろいろ思い出した俺はひとまず家に帰ることにした。


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